汚れた英雄

当時人気だったハードボイルド小説家大藪春彦の同名小説からの映像化だった「汚れた英雄」
小説では60年代のWGPが舞台でしたが、4冊に及ぶ長編小説、CGのない当時の撮影環境では原作に沿った映像化は難しいという事で、設定を一気に割り切り全日本の500ccクラスにし
北野晶夫のキャラクターだけを前面に持ってきた作品

世界グランプリ500ccでタイトルまであと一歩に迫っていた北野晶夫はレース中の事故により世界グランプリから退いた
しかし傷の癒えた晶夫は再度GPに挑戦すべく、まずは全日本へ復帰するのであった

北野晶夫はプライベーターなのでマシンはTZ500、スポンサーは彼の美貌を武器に世界的デザイナー、社長令嬢、世界的コンチェルンの総裁などの女性セレブを落とし金を得る
実際欧州のトップレーサーなどは社交界に入れるので、そこで人脈を築いて支援を得るのは普通の事
北野晶夫のやり方も極端に見えますが、欧州のやり方から見れば基本的な事ではあります

1982年の公開でしたが、やっと全日本ロードレースが500ccを中心にレース形態が固まってきて、本作では北野晶夫のスタントを行った平忠彦氏のようなスターライダーが登場しつつある時代(世界で活躍してた片山敬済氏などは世界故に逆に情報があまり入ってこなかったしホンダNRで悪戦苦闘してた頃)
そこに当時は珍しいオンボードカメラでの映像や、そもそも動画でレースシーンを見る機会すら少ない時代に当時の若者を大興奮させ、80年代、90年代に活躍したレーサーの大多数がこの作品に影響を受けたといっても過言でありません

予算を掛けた興行的な部分に於いては成功と言えませんでしたが、未だに根強いファンがいる作品として考えれば成功した作品といえるのではないでしょうか

ちなみに北野晶夫の自宅は誰かの家を借りたのではなく、セットを組んで作ったものだそうです

現在にこの作品を再映像化するならCGを駆使し、60年代のGPを舞台に完全映像化も不可能ではないでしょうね